京大英語 長文

京大英語 2001 第1問

今日は京都大学2001年の大問1について解説していきます。このページの以下を見る前に、必ず問題を解き、自分の解答と照らし合わせて見るようにしましょう。

また、ネットのページなどで問題を読み、手を動かさずに解答をなんとなく頭で作ることはやめましょう。

必ず試験本番と同様に、まずは過去問を買い、ノートに解き、そこからこのサイトを参考にしてもらえたら幸いです。

赤本などにもかなり網羅されているとは思いますが、実際にどのようなアプローチで考えるべきなのか、細かいところまで載せていますので、赤本などの解答の補完的なものとして、活用してもらえれば幸いです。

このページには主に下線部のところしか載せていませんが、下線部の外をしっかりと読むことはとても重要です(でなければ、カットされているはずですね)。

どのように英文を読んでいくか、などもどこかのタイミングで扱うことが出来れば、と思っています。

(1)A recently published book by an eminent sociologist describes a number of studies which have indeed shown that once a person’s income is above the poverty level, an increasingly larger one contributes next to nothing to happiness. Quite the reverse happens: as wealth accumulates, family solidarity and community bonding disintegrate.

解答例

それらが実際に示しているのは、ひとたび人の収入が貧困の水準を超えたとしたら、それ以上にますます多くの収入があったとしても、幸福にはほとんどつながらない、ということだ。むしろ全く逆のことが起こるのだ。つまり、富が蓄積されるにつれて、家族の繋がりや地域の絆は崩壊していくのだ。

A recently published book by an eminent sociologist describes a number of studies

【方針】

まず文が長いので訳を分割することを考えてみる。キリの良いところを前から探していくと、whichの手前までがちょうどSVOの形をとっているため、ここまでをまずは日本語にする方針を立てて欲しい。

【細かいところ】

a「とある」は, 採点基準に含まれるかは怪しいところだが、念には念を入れて訳したい。

eminentはやや難しい単語だが京大受験をするなら知っておかなければならない単語。

a number of「多くの」を忘れがちになるので注意。

describeは「描写する」と覚えている人が多いかと思うが、今回は主語が人ではなく本なので、それに合わせた日本語訳にする必要がある。

which have indeed shown that once a person’s income is above the poverty level,

【方針】

whichが指す内容は「多くの研究」であり、その研究が示す内容が以下に続く。まずは「それらは〜だと実際に示している」と作りたいが、そうしてしまうと “〜” の部分が長くなってしまい、主語と述語の部分が離れてしまう。よって日本語を工夫し、「それらの研究が実際に示しているのは、〜ということである」のようにするとわかりやすくなる。

ポイント

日本語訳をした後に、主語・述語が互いに離れすぎていないか確認する!

【細かいところ】

・poverty levelは日本語で「貧困線」と訳される場合が多い。この表現が出なかった場合は, 「貧困の水準」と訳すこと。レベル・基準、などは減点。

・indeedの訳は「実際に」とする。譲歩「たしかに~」の意味もあるが, それは後ろに逆接を伴うとき。それを判断基準として、indeecの訳語は決めてほしい。

例)

Indeed he is old, but he is still healthy. 

おっしゃる通り彼は年をとっているが, 今もなお健康です。ージーニアス英和辞典 第5版より

an increasingly larger one contributes next to nothing to happiness.

【方針】

「収入が増えても幸福につながらない」とまずは言いたいことを確認する作業から始めること。全体がわかった上で訳を作っていくのと、部分部分から訳を作り始めるのでは、結果として出来に大きな差が生まれる。

ポイント

訳す前に下線部の言いたいことを確認する

【細かいところ】

・an increasingly larger oneは日本語にしづらいが、「ますますより多くの収入」などとするとよい。

・contribute toは「貢献する」でも良いが、そもそもcontribute toは因果関係を表す。

 原因 contribute to 結果

▶因果関係を表す表現集 [リンク先] 

・next to nothingは nothingの隣, と考えて「ほとんど~ない」という訳になることに注意。

 必ず覚えておきたい表現。

・onceの従属節部分と, 主節部分は順接ではつなぐことが出来ない。そこで「ますますより多くの収入があったとしても」のように言葉を補ってやると良い訳が出来る。

ポイント

日本語訳をする際には、英語→言いたいことを頭にイメージ→日本語にする

ただしイメージを日本語にする中で本文にない要素を勝手に加えたりしてはいけない。必ず最後日本語が出来たものと、英語をつき合わせて要素漏れがないようにする

(2)Seneca* can be referred to for advice on coping with hardships, and actually he has much to say of relevance to such contemporary stupidities as violence observed in some soccer fans. He sees anger as a kind of madness, given that what makes us angry tends to be the frustration of dangerously optimistic ideas about the world and other people.

解答例

セネカは困難に対処するアドバイスを求めて、言及することが出来る。そして一部のサッカーファンに見られる暴力のような現代の馬鹿げたことに関連することについて、彼は実際に多くの言葉を遺している。我々を怒らせる原因は、世界や他人についての危険なほどに楽観的な考えが成就しないことが多いことによることを考慮すると、彼は怒りを一種の狂気と見なしている。

Seneca* can be referred to for advice on coping with hardships, 

【方針】

セネカについて言及する人はおそらく一般大衆(だからby youが省略されている)。よって受け身で訳しても良いが、ぎこちない日本語になったので受け身ではなく能動態として訳すことにチャレンジしてみても良い。

【細かいところ】

・coping ← cope より来ている。hardshipは「困難」

・advice on の on は「専門性を表すon」と覚えると良い

 例) a TV program on apes  類人猿に関するテレビ番組

and actually he has much to say of relevance to such contemporary stupidities as violence observed in some soccer fans.

【方針】

such A as B: B (具体例) のようなA (抽象的内容) となるので、後ろから前に戻って訳したい。その際、「そして実際に」の部分だけ訳してあとは後ろから、としないこと。acutallyのかかる位置はhe has much to say… に対してなので、「実際に」の訳も最後に回す。

【細かいところ】

・someの訳は「何人かの〜」としないこと。この訳の欠点は, 母数がとてつもなく多い場合には「ごく一部の」というニュアンスになってしまうことである。よって「一部の〜」という訳が良い。

・of relevanceの解釈は、of + 名詞 = 形容詞 の解釈で良い。

  例) be of great importance: とても重要である

※ ただ、of + 名詞 = 形容詞 とだけ覚えていても実際にはあまり役立たない。そもそも形容詞は名詞に修飾するものであり、性質を表すものである。今回はmuchに対してto sayという形容詞句が1つあるだけでなく、of relevanceもmuchにかかっている。

・relevanceはrelevantやrelatedという表現から何とか意味を判断したい。

He see anger as a kind of madness, given that what makes us angry tends to be the frustration of dangerously optimistic ideas about the world and other people.

【方針】

・given that SV〜 が「〜であることを考慮すると」という従属接続詞の働きをしている。よっていきなり前半部分から前から訳すのではなく、given以下を先に訳してから前に戻ってくるようにしたい。

【細かいところ】

・frustrationは「挫折すること」という意味があるが、高校生には厳しい。

・上がわかった上での話になるが、ここでのA of Bは「BがAすること」という訳し方が出来る(いわゆる主格のofの使い方)。

詳しくは

➡️主格・目的格のofについて

・dangerously optimistic ideasの部分の訳が「危険な楽観的な考え」としている人が多かった。dangersoulyは副詞でoptimisticにしかかかっておらず、上のように「危険な」と訳してしまうと、形容詞として捉えられてしまう。特に英語の点数が伸び悩んでいる人ほど、品詞に対する意識が低いことが添削をしていて感じた。

ポイント

構造分析・和訳をする際には1つ1つの単語の品詞をしっかりと意識すること。共通テストのようなテストは文法が多少わかっていなくても、単語と量をこなせばある程度何とかなるが、難解な文章を読み解く上で、品詞の正確な理解は必須。

・主節部分, see A as Bの基本の形はregard A as B: AをBとみなす

 これに関連する表現として、think of A as B, look upon A as Bのような表現がある。動詞 A as Bの形が出たら、regardの言い換えであるかもしれないと疑ってみると良い。

(3)Montaigne** believed in the superiority of wisdom — knowing what helps us live happily and morally — over mere learning. Education that makes us learned but fails to make us wise is, in his scheme of life, quite simply absurd. Would that he were living at this hour.

解答例

モンテーニュは単なる学習よりも、知性、つまり我々が幸せに、そして道徳的に生きることを助けてくれるものを知るということの方が優れていると信じていた。私たちを教養のある状態にしてくれるが、賢くはしてくれない教育というのは、彼の人生観において、全くもって馬鹿げたものであった。彼が現代に生きていたらなあ。

Montaigne** believed in the superiority of wisdom — knowing what helps us live happily and morally — over mere learning.

【方針】

・wisdomの言い換え(同格)としてダッシュ以下が書かれている。よって、「知性、つまり… 」といった訳し方をすると良い。

・ただそこばかりに目を取られてしまうと、解釈のミスをしてしまうことになる。superiority A over B はsuperior A to Bが名詞になり、toが変化したものと考えると意味は「BよりAの方が優れていること」という意味になる。ここで「優位性」という表現を使うこともできるが、そうすることで比較のニュアンスが出しにくくなってしまう。名詞表現でうまく表せない場合は動詞らしく訳すと日本語のまとまりも良くなる。

ポイント

和訳の際、名詞をそのまま訳してうまくいかない場合は動詞らしく訳してみる

Education that makes us learned but fails to make us wise is, in his scheme of life, quite simply absurd. 

【細かいところ】

・learnedは「教養のある状態」と考えると良い。

・fail to do: 〜できない

・schemeは「枠組み」の意味から、「彼の人生観において」くらいで訳したい。最悪schemeの訳を減点覚悟で飛ばすことで、ミスを最小限に抑えることも一案。

・quiteはsimplyに対して強調、simplyもabsurdに対しての強調。

Would that he were living at this hour.

【細かいところ】

・Would that… は「〜であればなあ (if only)」の意で、文語表現。これを知らなくても、後ろの部分でwere → 仮定法と判断して、何とかこの訳を捻り出したい。ここは大きく差がつくところ。

総評

京大の中でも標準的な問題。難しい問題に対応するためには、焦らず、今回出てきた文法事項・単語などを1つ1つ確実に身につけてほしい。難しい問題にチャレンジするのはそのあとで十分である。