読解の技術

英語の情報構造 旧情報から新情報へ

今日は英文を読む上で非常に重要な、英文の情報構造について書いていきます。

この記事を読むことで、第4文型の英語に対する理解や、倒置の文についても理解が深まります。

ぜひ最後まで読んでください。

give O1 O2 と give O2 to O1 は意味が違う?!

僕が学生の頃にあった問題集には、以下の2つの文が書き換え可能、という内容のものが多くありました。実はこの2つの文を比べた時に、意味的に大きな違いがありますので気をつけましょう。

① I gave her a bracelet yesterday.

② I gave a bracelet to her yesterday.

英文を作るときには文法の許す範囲において、旧情報 → 新情報 の流れを作るという決まりがあります。

言い換えると、英語では文末に来る内容が新情報を表す(文末焦点の原理: エンドフォーカスと言われる)ことが多いということです。

① I gave her a bracelet yesterday. の解説

1つ目のI gave her a bracelet yesterday. はherは旧情報、a braceletは新情報ということです。

考えられる具体例

・彼女の誕生日プレゼントを買おうと決めていたものの、何をあげるか決まっていない

・友達に相談したり、自分で色々とプレゼントを探して最後に決めたのがブレスレット

よって新情報であるブレスレットに焦点が当たっている形だと言えます。逆に、彼女は旧情報であるため、今回の文ではそこまで重要視はされません。

② I gave a bracelet to her yesterday. の解説

一方、2つ目の I gave a bracelet to her yesterday. の場合は、a braceletが旧情報、新情報がherになります。

考えられる具体例

・テレビやラジオなどでの視聴者プレゼントとして、ブレスレットをあげることは決まっている

・そこからDJさんや司会の方に選ばれたのが彼女であった

新情報はブレスレットではなく彼女になりますので、複数人の中から彼女を選んだ、などと直接は言わずあえてこの形でほのめかすことも出来ます。

という感じで、2つの文章は日本語訳の「私は昨日彼女にブレスレットをあげた」からは伝わらない、意味の違いというものが生じます。

旧情報・新情報に関する別の例

以下、旧情報・新情報に関する別の例を見てみましょう。

① Please give it to me. 

② Please give me it. 

ここまでの内容を理解していれば、②は英文として間違いであるとわかるはずです。

O2 (2つ目の目的語) は新情報が来るので、it = 既出の情報 は2つ目の目的語の位置には取れない、ということです。

英文の音読をこれまでに沢山してきているのであれば、give it to meは音の繋がりもあって発音しやすく聞き覚えのある人も多くいるかと思います。

一方、②の表現は聞き覚えがないはずです。このようなところからも、音読の効用も感じてもらえれば幸いです。

旧情報・新情報を英作文を書く際に活かす

また、この知識は英作文にも応用がききます。

「この病気はウィルスが原因で起こる」という文を英訳すると、例えば下の2つが考えられます。どちらが英文として自然でしょうか。

① This disease results from a virus. 

② A virus results in this disease. 

なるべく新情報を後ろ(文末)に置きたいので、①の方が自然だと言えるでしょう。

ただし文末に旧情報があるからといって必ず間違いであるとは限りません。

例) Tell me about it. 「それについて教えてください」

あくまでも旧情報→新情報の傾向がある、ということです。

難しいですが、文末に指示語がある場合は、前に新情報が来ていないか、一度チェックしてみると良いですね。

旧情報・新情報から英語の倒置を読み解く

また、文の最初に前置詞が置かれている倒置の形もこの原理で説明できます。以下の名古屋大学の文章を読んでみてください。

Learning words increases the size of a child’s vocabulary.  Behind this obvious truth lies a set of complex issues concerning the wide range of information that children employ in learning new words.  

(名古屋大学)

2行目のBehind this obvious truthは主語ではありません。前置詞のカタマリは主語にはなり得ないというルールがあるからです。

英文解釈のポイント: 前置詞のカタマリは主語にはならない

簡単な例

In America the new school year begins in September. アメリカでは新学年は9月に始まる。

よって2文目の構造はliesが動詞で、その後ろのa set of complex issues 以下が主語になります。つまり前置詞句 (M) + V + S の語順になっています。

なぜ M + V + Sの倒置が起きるのか

この文がなぜ倒置しているのかは、2つの観点から説明することが出来ます。

1つは元の語順に並べかえた時に lies behind this obvious truth という語順になり、文末に既出の情報(旧情報)が来る、ということが挙げられます。

もう1つは、英語では頭でっかちの文章は好まれず、なるべく後ろに長い要素を持ってくるように語順を取ります。

以下の2文を比べてみてください。

①Paying attention to grammatical accuracy when you speak English is important. 

②It is important to pay attention to grammatical accuracy when you speak English.

文法的にはどちらも正しいですが、1つ目の文は主語が長く、形容詞がとても短いため、英文としては不自然に見られることが多いです。

2つ目の文は、頭でっかちを避けるために仮主語のitが主語に用いられ、その後ろでto不定詞を用いていますね。

1文目、主語の部分をPayingではなくTo payを用いることも文法的には可能ですが、主語にto不定詞の名詞的用法はあまり用いず、動名詞の方が好まれます。

このように、主語に前置詞のカタマリが来て倒置がされる場合には、前置詞のカタマリの意味が旧情報で、主語に新情報が来る場合が多くあります。

まとめ