今日は京都大学2002年の大問1について解説していきます。
このページの以下を見る前に、必ず問題を解き、自分の解答と照らし合わせて見るようにしましょう。
また、ネットのページなどで問題を読み、手を動かさずに解答をなんとなく頭で作ることはやめましょう。
必ず試験本番と同様に、まずは過去問を買い、ノートに解き、そこからこのサイトを参考にしてもらえたら幸いです。
赤本などにもかなり網羅されているとは思いますが、実際にどのようなアプローチで考えるべきなのか、細かいところまで載せていますので、赤本などの解答の補完的なものとして、活用してもらえれば幸いです。
このページには主に下線部のところしか載せていませんが、下線部の外をしっかりと読むことはとても重要です(でなければ、カットされているはずですね)。
どのように英文を読んでいくか、などもどこかのタイミングで扱うことが出来れば、と思っています。
A single proposition returns as a duplicate over and over again. We tell it to other people or quote it as having been said by someone else, and we can place the statement within a systematic exposition of a scientific field after confirmation. The sameness of a meaning occurs with the varying interpretations people might give the meaning, and with the differences in vagueness and distinctness the proposition might enjoy in various minds.
解答例
一つの命題が複製として何度も何度も返ってくる。我々はそれを他の人に伝えたり、他の誰かに言われたものとして引用したりする。そして裏付けの後、とある科学分野の体系的な説明の中にその命題を位置付けることが出来る。人々がその意味に与えるかもしれないい様々な解釈や、その命題が様々な人の頭の中で持つかもしれない曖昧さや明瞭さといった違いはあれど、意味の同一性は生じるのである。
A single proposition returns as a duplicate over and over again. We tell it to other people or quote it as having been said by someone else,
【方針】
・2文目のasは前半部分のtell it to other peopleにはかからない。英語においては第四文型を取る際、1つ目の目的語は旧情報で、2つ目の目的語は新情報になる。よってitの指す内容は前のa single propositionのみにしかかからず、後ろでasで説明されることは考えにくい。ここは取り間違えることが多いので、注意してほしい。
【細かいところ】
・proposition「命題」はこのような堅い文章ではたまに見かけるものなので、覚えておきたい。
・asを「〜のように」と訳す人が多かったが、これは誤訳。「〜のように」の訳はasが接続詞のときはそのような意味となるが、今回は前置詞として用いられている。
and we can place the statement within a systematic exposition of a scientific field after confirmation.
【細かいところ】
・after confirmationは「確認のあとで」でOK。何を確認するか、というとおそらく正しいかどうか、ということなので「裏付けの後で」と一歩踏み込んだ解答をしても良い(他の人と比べて、お!と思わせる解答になりますが、そこで加点されるかどうかは怪しいです)。
・expositionは「説明」動詞はexpoundからだが、かなり難しい。2つ目の意味として展示会・博覧会 (expoと略される) があるが、こちらの方がよく知られているかも。ただその手前のsystematic「体系的に」の訳は何とか出したい。
・the statementは「主張」と訳しても良いが、theがあるのでa single propositionを指してのことだと理解しておくこと。理解した上での訳か、そうでなくただ英語を日本語に訳しただけの解答では、細かいところで差が出る。
ポイント
和訳の問題では、訳す前に必ず下線部が一体どのような意味なのか、俯瞰的に考えること。そのため理想としては全てを読んでから、それが無理でも最低下線が含まれている段落は読み終えてから問題に取り組むこと。
The sameness of a meaning occurs with the varying interpretations people might give the meaning, and with the differences in vagueness and distinctness the proposition might enjoy in various minds.
【方針】
・A occurs with B1 and with B2. という全体の構造をまずは掴む。その上で、上のポイントに挙げたようにこの1文が何を言いたいかを考える。するとAの内容とB1, B2の内容は一見逆であることが見えてくる(同一の意味だが、様々な解釈がある、等)。
・直訳で考えると「B1, B2に伴ってAが起こる」となる。
・Aは主語なのでメインの話題、一方B1, B2はwith以下であり副詞句のカタマリ、つまり文全体としてはおまけの位置付け。
・以上をまとめて考えると、「B1, B2であるがAは生じる」という全体の訳の構想を作ることができる。「ではあるが」は1つ目に挙げたように、B1, B2は一見Aと相反する内容であることから日本語として付け加えた。
・この全体の訳の方針は、上に挙げたように文全体がどのようなことを伝えたいのか、を考えないと出てこない。問題としては非常に良い問題だが、受験生にとってはなかなか出てこない解答だと思う。この問題を解いて、解説を読み、このような発想を訳の際に持つことが出来れば上出来、と考えるくらいで良い。
【細かいところ】
・people… のところは関係代名詞のthatが省略されており、意味に与えるかもしれない様々な解釈、と訳すと良い。interpretation「解釈」はたまに間違える人もいるので覚えておきたい。
・enjoyの意味として「享受する」を覚えている、よく勉強している人もいるが、一歩進んでその「享受する」とはどのような意味なのか、また英英辞典においてこのenjoyはどのように言い換えられているのか、そこまで覚えて欲しい。このenjoyはhaveの言い換えであり、仰々しく「享受する」などと訳すのではなく「持つ」くらいに訳して欲しいし、その方が意味としても通じる。
・various mindsは様々な人 (の頭の中) と考えるとわかりやすい。
・vagueness, distinctnessはそれぞれ形容詞より「曖昧さ」「明瞭さ」と出してほしい。
The words we exchange capture the way things have appeared to us, and if we are authoritative in our disclosures they capture the way things are. At the same time, the words are flavored by the style with which we have disclosed the things in question, so they indicate to the reader or listener some truth about ourselves as well.
解答例
我々がやりとりする言葉は物事が我々に対してどのように見えるかを捉える。そして我々が明らかにすることにおいて自信があるのであれば、言葉は物事がどのようなものかを捉える。同時に、問題となっている物事を明らかにする文体によって言葉は色付けされるので、言葉はその読み手や聞き手に対して我々自身についても、幾らかの真実を示唆するのである。
The words we exchange capture the way things have appeared to us, and if we are authoritative in our disclosures they capture the way things are.
【細かいところ】
・the way SV… は接続詞的に用いられている。「〜の仕方」だと訳しにくいので、「どのように〜」と訳すと良い。
・authoritativeは「権威のある」そこから、「自信のある」という表現が出ればいいがこれは難しい。
・disclosureは「暴露」「明らかにすること」ここでも名詞を動詞らしく訳したいので、「我々が明らかにすること」とする。
・最後のthe way SVの形はas「〜のように」と同じだと考えると良い。
この用法はBruno Marsの曲名 Just the way you are で覚えておきたい。結婚式などでも用いられる定番の曲です。
At the same time, the words are flavored by the style with which we have disclosed the things in question, so they indicate to the reader or listener some truth about ourselves as well.
【方針】
・flavorは「風味づけられる」という意味から来ているが、日本語が少し作りづらい。「〜によって色付けされている」くらいになるか。
・so以下の文では、indicateの目的語が直後には出ていない。本来の語順は… they indicate some truth about ourselves as well to the reader or listenerとなるはずだが、目的語部分が長いため、先にto以下を前に持ってきた形となる。この部分の構造はすっと理解しておきたいところ。
【細かいところ】
・styleの「文体」という訳語はぜひ覚えておきたい。ちなみに英文ライティングの名著に “The Elements of Style” という本がある。1920年代に初版が出て、今でも多くの人に読まれる英文ライティングのイロハが載っている本である。訳もネットですぐに見つかるので、興味がある人はぜひ。
・things in question 「当の物事」や「問題となっている物事」などと訳す。
・as wellを単に日本語で適当なところに「〜も」と入れるだけではダメ。ここのas wellの意味合いは、当の物事を文体によって明らかにするだけでなく、文体によって自分自身の真実も明らかにする、という内容を踏まえてas wellが使われている。解答によっては、その意味合いを理解せずに適当にas wellの訳をしただけ、という人も多くいたのでここは理解した上で日本語に直したいところ。