今日は京都大学2002年の大問2について解説していきます。
このページの以下を見る前に、必ず問題を解き、自分の解答と照らし合わせて見るようにしましょう。
また、ネットのページなどで問題を読み、手を動かさずに解答をなんとなく頭で作ることはやめましょう。
必ず試験本番と同様に、まずは過去問を買い、ノートに解き、そこからこのサイトを参考にしてもらえたら幸いです。
赤本などにもかなり網羅されているとは思いますが、実際にどのようなアプローチで考えるべきなのか、細かいところまで載せていますので、赤本などの解答の補完的なものとして、活用してもらえれば幸いです。
このページには主に下線部のところしか載せていませんが、下線部の外をしっかりと読むことはとても重要です(でなければ、カットされているはずですね)。
どのように英文を読んでいくか、などもどこかのタイミングで扱うことが出来れば、と思っています。
Researchers, in the paper on music and spatial task performance, reported that listening to as little as ten minutes of Mozart’s music produced an elevation in brain power lasting ten to fifteen minutes, a finding that triggered much of the current interest in the positive effect of music on learning.
解答例
音楽や、空間的な課題処理に関する論文の中で、モーツァルトの音楽を10分ほど聞くだけで、10分から15分続く脳の能力が向上した、と研究者は報告した。その研究は、音楽が学習に与える好ましい効果を生み出すことに関する現代の関心の多くを引き起こす発見であった。
【方針】
・reported that… のthat節を追っていくと、…, a finding that ~ の部分に違和感を持つだろう。後ろは関係代名詞で、結局 a finding ~ は名詞のカタマリと考えられる。となれば、カンマは同格と考えることが出来る。findingは「発見」、つまりこの発見内容はreported that のthat以下、と考えることが出来る。reported that節〜 のカタマリを指して、言い換えるとa finding… という構造である。とわかれば、reported のかかる内容は1番最後までではなく、fifteen minutesまでとわかる。
【細かいところ】
・paperは今回は「論文」という意味。入試問題では研究や実験に関連する文が多く扱われるため、この意味は確実に押さえておきたい。
・後ろのonは「〜について」という意味であり、aboutよりも学術的・科学的・専門的なニュアンスがある。例) Do you have any questions on this matter? 「この件について何か質問はありますか」
・spatialはspaceの形容詞。task performanceは課題を行うこと、などとしても良い。頭の中で空間図形について考えたりするようなこと、と具体例に置き換えるとわかりやすい。
・as little as ten minutes… 「10分と同じくらい少ない」→「10分ほどしか〜」と考える。後ろの内容がプラスの内容なので、10分ほどしか〜しなくとも… (+の内容) という大枠を作った上で訳したい。
・elevation ← elevator から判断できる。直訳では「脳の力の向上を生み出す」となるが、このような名詞のカタマリは文章 (SV) に直し、「脳の力を向上させる」とすると、以下日本語をつなげやすくなる。
・finding以下、名詞と前置詞のセットで考えると良い。まずはinterest inはセットで考え、「〜についての関心」これは be interested in… と覚えているように、動詞でも名詞でも使われる前置詞は同じ(仲良しの前置詞は同じ、と授業では説明している)、ところから判断できる。また、effect on…で「〜に対する効果」はhave an effect on… という決まり文句で覚えられる。
Then Mozart suddenly exploded with a passion for music, filling every bit of space in the house with scribbled figures after he learned the fundamentals of arithmetic.
解答例
そして、モーツァルトは算数の基本を学習した後に、家の中のありとあらゆるところに数字を書き殴ることで、音楽に対する情熱を突如として爆発させた。
【方針】
・後半部分の分詞構文の意味をどう取るか、これが悩まされる。文の後ろに来る分詞構文の考え方は以下のリンクを参照して欲しい。その中で、今回は手段の意味で取るのが最も意味が通るものとなる。
・後ろに続く分詞構文の中で最もよく使われる「順序 (andの省略)」の意味は今回は不可。下線部直後の文をみると, “His passion for music was closely connected to his understanding of mathematics.” とあるので、音楽に対する才能を爆発させた後に、数字を部屋に書き散らした、とはならないから。
【細かいところ】
・scribe「書く」イメージを持っておく。script「台本」なども関連語。
・figureは多義語だが、ここでは「数字」の意味。ヒントは後ろにarithmetic「算数」があること。
・fill A with B「BでAをいっぱいにする」1語1語に注目しすぎると、with以下のカタマリだけをみて、「〜と共に」などと誤解してしまう可能性がある。英文解釈で少し悩んだ時は、広い視野を持つことを意識すると良い。直訳すると「書かれた数字で家の小さなスペースのすべてを満たす」となるが、これは解答例のように小慣れた日本語に変えたい。一度直訳で書いてみた後、直すと良い。
➡️後ろに続く分詞構文の意味について
In essence, scientists are saying higher mental operations such as music and mathematics use a common, structured, and spatial-temporal language that allows people including children to work across seemingly unrelated academic disciplines that are tied together by this communication link.
解答例
本質的に、音楽や数学といった高度な知的活動は共通の、構造化された、空間的・時間的な言語を用いており、それによって子どもを含む人々は、一見関係の無い学問分野を超えて頭を働かせることが出来る、と科学者たちは述べている。その学問分野は、この言語によるつながりによって共に結びつけられている。
【方針】
・文が長いので、まずは2文に分けられるところを探す。language that allows… の部分の手前で一度訳した文を切るのはありだろう。
・that allows… の部分は無生物主語の訳し方でOK。「そのおかげで、子どもを含む人々は〜することができる」
➡️無生物主語の訳し方
・disciplinesに対する修飾が前からも後ろからもあり、両方とも一気に訳してしまうとわかりにくい日本語になる。そのため、一度前からの修飾だけを訳してしまい、別の文に後ろからの内容を加える形とした。
【細かいところ】
・mental operation「知的活動」mindは「知力」の意味があり、そこから来ている。
・higherは比較対象を伴わない、絶対比較級の使い方。
※絶対比較級とは、比較対象を伴わない用法。例) the upper class「上流階級」a higher education「高等教育」
・temporal「時間の」はなかなか出てこないかもしれない。temporary「一時的な」は知っているはずなので、これに関連させて覚えておきたい。
・disciplineは多義語であるが、ここではfield「分野」の意味。よく出るので覚えておきたい。
・by this communication linkの意味が非常に取りにくい。これが指す内容は、a common, structured, and spatial-temporal languageのことである。thisが指示語であるため、communicationはlanguageのことと考え、思い切って「この言語によるつながり」と訳した。直訳でコミュニケーションによるつながり、としたなら、おそらく内容が読めていない解答と見なされるだろう。(ただし考えた上でわからなければ仕方なく、コミュニケーションと訳さざるを得ないと思うし、これは受験生には難しいだろう)。
When learning like this happens in a chorus or orchestra, the total effect is even more potent. What other school activity cultivates a strong community spirit, helps us learn languages, increases our mathematical and scientific capacity, and puts us in touch with our musical heritage?
解答例
このような学習がコーラスやオーケストラで生じる時、全体としての効果はより強力なものとなる。強力な地域精神を培い、我々が言語を学ぶことを助け、数学や科学に関する能力を向上させ、音楽の過去の名作に触れされてくれるものは学校の活動で他に何があるだろうか。
【方針】
・2文目の解釈に悩んだ人はおそらくwhatを関係代名詞 (the thing(s) which…) で考えていただろうが、これは間違い。まずは文末のクエスチョンマークに注目してほしい。ここから疑問文であることがわかる。また、and puts us…のandが何を並列しているかを見れば、cultivatesから4つの動詞が並んでいるとわかる。つまり、主語がwhat other school activity「どのような他の学校の活動が…」となる。このwhatは中学時代にはよくみただろうが、なかなか思いつかないかもしれない。例)What sport do you like? のwhatと同じ、といえばわかるだろう。
【細かいところ】
・potent「強力な」なかなか難しいがこの機会に覚えておきたい。potential, power, possibleなど、potentから多くの派生語が生まれている。関連させて覚えておきたい。
・puts us in touch with… 直訳すると「〜と連絡を取る状態に我々を置く」ここから自然な日本語に変えていきたい。
・musical heriage「音楽的遺産」は、歴史的に有名なクラシックの曲などをイメージすると良いだろう。